砂の女
(1)以前の感想
中学生の時に読んだときは、「砂の中に閉じ込められる恐怖感」、「村人の不気味さ」「砂の女の色気」「ラストの水の発見」が印象に残っていて、『不気味な小説』という印象でした。
(2)再読しての違い
- 「時代の古さ」
携帯電話、TV、パソコンが無い、家が木造など時代の古さを感じました。
中学生のときから20年以上時代が進んだということで月日の流れを感じました。
- 「砂の女」の田舎くささ、村人の不気味さ
砂の女は今までは妖艶なイメージでしたが、田舎くさい女として描写せれていることに気づきました。
また村人も以前は不気味に思っていたのですが、再読すると、よく居る田舎の排他的な人間というように読めました。
成長するに従って会う人間が増えてきたので印象が違ってきたのだと思います。
- ラストの水の発見
再読するまでは印象的な発見の場面だったのですが、再読すると「つまらない発見」のような印象を受けました。
これも社会経験を経ることで「水が取れても外に出られないと意味がない」という感想を抱いたからだと思います。
(3)「砂の女」のテーマ
砂の村/家は、日本の閉鎖的な共同体(農村、会社、官庁)の中での閉塞感を象徴していると思います。外の世界が砂のように移り変わるなかで、共同体と今の生活を維持するために時代遅れのやり方で必死に砂を書き出しているのが多くの人の日常ではないかと思います。
ラストのシーンで男は縄梯子を登らないのですが、縄梯子を一度登って穴の外の世界を見ていたらどうなったか興味があるところです。
(穴に戻った後不満が募るか、一度外を見ると穴に戻りたくなくなるか。女を置いて出ていくことをどう思うのか。)