データサイエンスとデータドリブン経営

データサイエンス/デジタルマーケティング/データドリブン経営の書籍紹介・感想

漂流

  • 人間の生きる条件について

極限状態が描かれていることで、最低限度の生活がどのようなものか自分の中で想像できてサバイバル能力が高まった気がします。

はっきりしたように思います。忘れがちなこととして、宗教(心のよりどころ)、希望、運動などがありました。特に希望は「船で帰る」という目標が出来てから生活の張り合いが出てコミュニケーションも活発化したと描写もあり、必要不可欠だと思いました。

 

食料を得るための農業・漁業、自然を加工して生活空間、道具、設備を作り出す製造業、建設業などが人間の生活の基盤であることを改めて思い知らされました。

小説の中で、お金は無人島では役に立たないということが賭けの対象で貨幣が使えないということで描かれています。

また、資源は有限であり無限にあるわけではなく計画的に大切に使用しないといけないということがわかりました。東京にいるとお金の力で何でも手に入ってしまうので、当たり前のように資源を無駄遣いしてしまいますが、気をつけないといけません。

 

  • 目標の達成について

決断して設計して実行すると、後から必要な資源が集まってくるという例が示されていたように思います。敷木や錨は探していたから資源が見つかる例に思いました。

 

  • モノづくりについて

船の製造においては、専門的な知識の所持、設計、プロトタイプ製作、調達、実装(手抜きをしない)というモノづくりのプロセスが示されていて面白かったです。船体が作り上げられていく様子はワクワクしました。

 

  • ドキュメンタリー文学の文体について

①漂流の文体について

漂流の文体について高野さんが「彼が」を使っていると指摘されていて、Amazonのレビューでは「見てきたように書いている」とか、解説でも「ただ正確な目でひたすら若者の行動を追っていき」とあり、文体が非常に気になりました。

改めて文章を見てみると「かれは~と思った。」「かれらは~した。」「鳥肉は火にかざされた。」というような客観的かつ情景をイメージできる描写が一定のリズムのよい文体で続いていました。それが原因で読みやすく物語の中に入っていきやすいと思ったのかもしれません。

プロジェクトXのナレーション

また、プロジェクトXのナレーションの文体に似ていると思いました。

プロジェクトXのヒットの要因にはナレーションの文章がよくて物語に入っていきやすいというのもありそうです。(一流の制作陣を集めていると思われるので、いい仕事がプロデューサーの知らないところで行われているのかもしれません。)

アファメーションへの応用

苫米地英人さんが、村上春樹の小説の文章を参考にしてアファメーションの文章を作ると臨場感が上がると書いていました。また、小林一三さんはもともと小説家志望で数々の宝塚歌劇やターミナル百貨店などのイノベーションを起こしたそうですが、イメージする力に長けていたのかもしれないと思いました。(催眠術も、一定のリズムで五感を刺激しているような気がします。)

 ④ビジネス文書への応用

会社に入って文学的な表現を使って「小説のような文章を書くな」と怒られたのですが、吉村さんのように、余計なことは言わず事実を正確に描写によって、余計なことは言わずに、それでいて相手に事実を正確にわかりやすく伝えられるかもしれないと思いました。

 

  • おみくじについて

船を進ませる方向をおみくじで引いて選んだと書いてあるのですが、自分たちの位置を太陽の位置や流された方向で分かっていてもおかしくないと思います。(無人島長平が話を面白くするために作り話をしたのか、吉村さんの脚色したのか。)

 

  • 教養醸成の会の他の回との繋がりについて
  • 文明崩壊

火山島で水や土がない所で太平洋の離島の物語を思い浮かべました。(サンゴ礁の島だったと思いますが。)船を作る木がないのはイースター島のカヌーが作れない話、下巻の日本の森林保護の話も思い出しました。

  • 海賊の経済学の「海賊の掟」

薩摩船の船員が制裁を受ける場面は、海賊の掟での制裁を思い起こしました。

  • 海賊の経済学の「経済学」

経済学の定義として「有限の資源を効率よく活用する方法として自由経済がある」と言われたりするのですが、Wikipediaで明治期に事業家によって鳥島アホウドリの乱獲が行われ、数が激減したとありました。長平たちが生きていくための分だけを念仏を唱えながら殺していたのに対して、お金のためにアホウドリが乱獲されるのは、資本主義の不都合の一例だと思いました。(この問題は「公共経済学」とか「環境経済学」とか「共有地の悲劇」として扱われています。)